
ミト 「F.S.S.」のグッズといえば、定番はガレキ(ガレージキット)かな。最近刊行されたリブートでも「the K.O.G.」の完成品フィギュアを、応募者全員サービスしていましたよね。3万5000円を支払えば誰でも手に入るっていう。
岩屋 ガレキ関連はメーカーから出てるのだけど、それ以外のグッズっていうのは実は皆無で。そもそも外部でグッズが作られるってこと自体が、ほとんど初めてだとか。だから僕らも、なにを作ったらいいか手探り状態なんです。
上杉 この話をもらったとき、まず最初に「『F.S.S.』をグッズ化するとしたら何か欲しいものありませんか」って言われて。オファーの仕方が自由過ぎて困るという(笑)。
ミト グッズというのは、もう単純に欲しいものって発想でいいんですよね?
牛尾 だったら僕は「命の水」一択かと。
ミト あー、どんな願いでも叶うっていう。それは、水の精製から入るの? グッズを作るって、そういうこと!?
牛尾 違う違う。すえぞうが持っていた「命の水」が入っていたボトルのこと。コンビニで売ってた「ファイナルファンタジー」のエリクサーをイメージした飲料みたいな。マンガに登場するガジェットは、やっぱり持ちたいじゃないですか。ファティマが頭に付けているヘッドコンデンサとかもいいな。
ミト でもそれ、どう活用するか難しいよね。僕は個人的に、モーターヘッド「破烈の人形」のマークをステッカーで作ったことがあります。素人の仕事だから、印刷とか出来上がりは目をつぶってほしいものでしたけど。そういった紋章やマークをセットにしたステッカーが、正規品で出たら嬉しいですね。
上杉 セットもいいけど、モーターヘッドに描いてある実物大とか、馬鹿でかいものを作るのもいいかもしれない。さっき牛尾さんがおっしゃってたガジェットじゃないけれど、原作のスケールが感じられるようなものはほしいですね。
牛尾 あと「F.S.S.」といえば、ヒッチハイクのシーンが定番でしょう。ファティマを脱がせて、お色気シーンを描くやつ。僕、ソープとメガエラがビキニ姿になって「JARTH→」って紙を掲げてたシーンが好きで。あの行き先を書いた紙を、ボードにしたやつが欲しいな。
岩屋 コア過ぎる上に、また使い道に困るものを……(笑)。

岩屋 「F.S.S.」は作中の用語に楽器の名前を使ってたり、音楽ネタが多いですよね。おふたりがハマったのも、そういうところからですか?
牛尾 僕は高校のころ、友達に勧められて読みはじめたのですけど。音楽ネタがきちんとわかるようになったのは、プロになってから。スタジオに置いてあるような機材ブランドの名前だったりとか、マニアック過ぎて昔はわからなかった。
ミト 「F.S.S.」って文化の集合体みたいなものなので、ファッションも音楽もアニメもミリタリーも入っているんですよ。女性ファンの方で、キャラクターが身に着けている下着のブランドに注目してる人もいましたし。いろんな楽しみ方ができて、入り口は広い。
上杉 僕も「F.S.S.」のことをFacebookに書いたら、友人のDr.Shingoさんから速攻で反応が来て。音楽方面からのリスペクトは強く感じましたね。
ミト デザインがしっかりしているというのも、他ジャンルからのファンがつく理由の1つかと。例えばミラージュの紋章が洋服にプリントされていたとしても、知らない人が見たらブランドものだと思うんじゃないかな。マンガ絵を使ってもオタク寄りにならないというのは、大きな魅力かと。
岩屋 プロップ的なものもいいけれど洋服だったり小物だったり、好きな作品のアイテムを持ち歩けるのがグッズの醍醐味ですよね。日常品に「F.S.S.」の要素を上手く落とし込んでいきたい。
牛尾 だったら、ひとつお願いしていいですか?「F.S.S.」ってカッコいいバキッとしたイメージが強いけど、ギャグシーンとかデフォルメしたキャラはすごくカワイイんですよ。スタイリッシュなアイテムだけじゃなくて、そういうカワイイ要素もちゃんと入れ込んでほしいな。

ミト あとね、すごく大事な要素として「F.S.S.」は終わらないというのがありますね。一度ハマったら、一生楽しめる作品なんですよ。事前に作品世界で起こる出来事は年表としてまとめられているから、大筋はわかっているわけですけど。大事件しか書いていないから、その間になにがあったのかマンガで描かれるまで想像して楽しんでいられるし。
牛尾 これだけ発展しているジョーカー星団が最終的には衰退していくことも、読者にとってはあらかじめわかっている。僕としては年表の7343年に書いてある「ラキシス、突如1945年1月のポーランドに出現」「同年ベルリン攻防戦に参加」っていう部分が早く読みたい(笑)。
ミト 長く読まれる作品だから、ファンの年齢も上と下で相当離れていますよね。また洋服とかは流行り廃りがあるから、グッズも時代に左右されない普遍的なものがあるといいかと。
上杉 僕も同じことを考えていて、長く使うものとしてインテリアの方向を模索しているんです。工房を持ったアーティストの人と話をしていて、価格は張るけどインパクトのある1点もので勝負できないかと。
ミト 少し前「けいおん!」のギターがオークションにかけられて、300万円くらいになったじゃないですか。本当に人が欲しがるものは、いくらであろうと売れてしまうんですよ。だから臆さず、すごいものを作ってほしい。「FOOL for THE CITY」モデルのギターだったら、僕が買います(笑)。
岩屋 もう予約が入った(笑)。心強いお言葉いただいて、デザインする側としても気合が入ります!
牛尾 僕らベラベラ喋ってただけですけど、これで参考になったのかな?
ミト 「F.S.S.」でわからないことあったら連絡してください。まだまだ喋れますから(笑)。
