お菓子研究家のかたわらマンガエッセイの執筆でも知られる福田里香さんと、コミックナタリーの編集長の唐木元は、かねてからのマンガ友だち。4月のある日、唐木が電話で相談しました。「こんど物販部門を立ち上げようと思うんだ。縁あるアーティストの人たちとグッズを開発して売るの。マンガ家だったら誰がいいかな」。
すると福田さんから思ってもみない返事が。「そういえば今度出す本、オノ・ナツメさんが挿絵なんだけど、めちゃくちゃ素敵だよ。オノさんがお手製で作ったのし袋とか普通に売ってたらうれしいかも」。「!!!」と閃いた唐木はさっそく単行本の編集を手がけた太田出版の上村晶さんに連絡を取り、プロジェクトはスタートしました。

オノさんが自分用に作っていたのは、賄賂を差し出す越後屋をあしらったぽち袋。現金を包むぽち袋に贈賄シーンのイラストをあしらうとは、なかなかパンチが効いています。大胆なトリミングはさすがプロの仕事。これをベースにバリエーションを付けたセットを、記念すべきひとつ目のアイテムに決めました。
せっかくの初プロジェクトです。ひとつと言わず、5アイテムくらい作りたい――結成されたばかりのストアチームは、さっそくイラストとアイテム選びに取りかかりました。オノさんの「賄賂用ぽち袋」に倣って、描かれたシーンとアイテムの内容が噛み合っていることが、選定の基準です。

あっという間に季節は変わり、蒸し暑い7月のある日。太田出版の会議室で、関係者が一堂に会する開発ミーティングが開かれました。オノさん、福田さん、上村さんのゴロ食チームに、イラストとアイテムの組み合わせを提案するのです。ナタリーからは唐木、北村、福島のストアチーム。緊張の初プレゼンが始まります。
子供にも等しい自作があしらわれるのですから、著者おふたりの視線は真剣。話題はイラストの選びから素材のグレードまで多岐にわたりました。「風呂敷はちりめんよりシャンタン(平織り)のほうが使いやすくない?」「Tシャツの襟ぐり、広いのがいいな」。仕様のすみずみまで思い入れを込めた、5つのグッズをご覧ください。
オノ「オフホワイトで暖かみのある陶器と、白く硬質な磁器。一瞬迷ったけど、この絵をあしらうなら磁器の質感がマッチしていると思います」
福田「本を代表するイラストなので、メジャー感あるアイテムにあしらいたいな」