人間椅子のバンド生活30周年を記念したメンバー3人の胸像の受注販売がナタリーストアでスタートしました。昨年12月に東京・中野サンプラザホールで行われた「バンド生活三十年〜人間椅子三十周年記念ワンマンツアー」最終公演の会場にてサンプル品をお披露目し、販売開始を待ち望む声を多くの皆様からいただいたこのアイテム。衣装や背姿などメンバーのこだわりが細部にまで反映された精巧な一品に仕上がりました。
このページでは受注販売の開始に合わせて、人間椅子へのインタビューを公開。1年以上を費やした胸像の制作過程や、その使い道などについて話してもらいました。
取材 / 橋本尚平 文 / 寺島咲菜 撮影 / 西槇太一
初の特効に感激
──デビュー30周年ツアーお疲れさまでした。中野サンプラザホールは過去最大規模の会場でしたが、ライブをやってみていかがでしたか?(参照:
人間椅子が満員の中野サンプラザで30周年公演、無数の銀テープが観客を襲う)
和嶋慎治(G, Vo) 今回はベスト盤(2019年12月発売「人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤」)の収録曲を中心に演奏して、おなじみの曲が多かった分、お客さんもノリやすかったんじゃないかと思います。ファイナルの中野サンプラザはロックの殿堂とされている場所なので、大きな幸福感に包まれながらライブすることができました。その余韻が今も続いている感じですね。かつてはメンバー全員高円寺に住んでいましたから、なじみのあるサンプラでライブができて感動もひとしおです。
ナカジマノブ(Dr, Vo) 土地柄がしっくりくるっていう。
鈴木研一(B, Vo) ずっとツアーを回ってきて、中野サンプラザだけ前列のお客さんの顔ぶれがいつもと違ったんですよね。30周年記念に大きいホールで初めてやったから、お祝いのつもりでひさびさに来てくださったんだろうなと思ってありがたかったです。
──ネットで反響を見ていると、サンプラザ公演で人間椅子のライブを初めて観るお客さんも多かったようですね。
ナカジマ 僕らのライブはブッキングから全部自分たちでやっているんです。今回のライブも、曲順はもちろん衣装のセレクトも特効も、誰にも頼らず自分らで作り上げた最高のものをお見せできたので、うれしかったですね。あと銀テープが飛んだときは感激しました。いい景色でしたね。
和嶋 特効は初めてやりました。銀テープが舞った瞬間、お客さんの気持ちが上がったんじゃないかと思うんですよ。それを強く感じられて、テープにしてよかったなと思いました。煙だとプシューっと消えてなくなるけど、テープは物として残るでしょ? 曲中でお客さんが銀テープを振ってくれて、さらに一体感が生まれましたよね。
──和嶋さんはライブ中に「今後も大きい会場で特効をいっぱい使ったライブをやりますから!」と宣言していました。
和嶋 言葉に出せば可能性は高くなるんじゃないかなと。サンプラザでライブができて光栄です。いつかは日本武道館でやれたら…。
鈴木 なるべくならお客さんを座らせてあげたい。座席があれば僕らのやたらと長いMCも座って聞いていられますし。
和嶋 じっと立っているのは疲れますよね。僕らは演奏しながら動いているからそんなに疲れないんですよ。一方で座席指定だからこそ申し訳ないなと思うこともあって、お客さんがお目当てのメンバーのところに移動できないんですよね。花道を作れば解決するのかな。機会があれば、それもやってみたいです。
鈴木 通路を歩くくらいなら昔やりました。和嶋くんがバラの花を持ちながら。
和嶋 20年以上前かな?
ナカジマ 演出案で、ドラムセットを回すという案も出てたんですよ。ピーター・クリス(Kiss)みたいにドラム台が上昇していくのはできるかもですね。
鈴木 ははは(笑)。あとプラスチックのクリスタルケースの中でドラムを叩いて、そこにどんどん水を注いで……。
和嶋 音が悪くなるんじゃないの?
鈴木 俺は胴体を切られるやつやるから。
ナカジマ マジックショーみたい(笑)。
和嶋 夢がどんどん広がりますね。
人間椅子がロックの本場へ
──30周年ツアーが終わり、2月にはドイツとイギリスを回る海外ツアーが始まります。
和嶋 光栄ですよね。YouTubeの動画をきっかけに僕らを知ってくれた方が多いでしょ? コメント欄を見る限り圧倒的に男性ファンが多い気がするな。ロック好きって世界中にいて、中でもヘヴィメタルを好きなのってオタク的な人たちだと思うんですよね。だから熱心に応援してくれるんじゃないかな。
──「無情のスキャット」のミュージックビデオは再生回数が370万回(2020年1月時点)を突破しました。海外ファンからの反響が大きかったようですね。
和嶋 以前から海外の人が僕らの動画を観てくれていて、曲を配信するとアメリカとかで買ってくれる人がけっこういて。その流れで長尺のMVを作ったから驚かれたのかな。タイミングがよかったんだと思います。
ナカジマ 海外で注目された理由について、正直すぐに明確には思いあたらないんですけど、和嶋くんが言ったようにタイミングが合ったんではないでしょうか。動画を観てた方の口コミが知らない人にも偶然届いて、「なんだこいつらカッコいい!」みたいなノリが広がったのかなという気はしますね。
和嶋 「無情のスキャット」が入っているアルバム「新青年」(2019年6月発売)は今まで以上に力を入れて作ったんですよ。どの曲もいい曲です。たぶん海外の人には明るい曲より、暗めの曲というか、現実が満たされていない人に向けた曲のほうがウケるんじゃないでしょうか。特に「無情のスキャット」はそういうテーマで書きました。歌詞の意味はわからなくても、そういう曲調は伝わったのかなと思います。
フェスでは新曲もウケる
──前のベスト「現世は夢 〜25周年記念ベストアルバム〜」(2014年12月発売)が出た頃から今回のベストが発売されるまでの5年間は、人間椅子にとってどんな期間でした?
和嶋 あっという間だったし、10年ぐらいの月日を過ごしているような濃密さがありました。急に忙しくなったからかな。僕らデビューしたのが30年前ですけど、すげー忙しかったなというのがその後1、2年ぐらいで。今はその当時を上回っている気がします。
鈴木 長い間続けてきたバイトを辞めた時期が、5年くらい前なんですよね。個人的には平日もじっくり曲を作れるようになり、プロモーション活動を入れてガンガン宣伝できるようになった5年間でした。
ナカジマ 2013年と2015年に「OZZFEST JAPAN」に出たんですけど、そのあたりからアルバムを出すたびにライブで盛り上がるような代表曲を作れた気がしますね。和嶋くんがよく言ってたんですけど、2度目のデビューというか、その時期から周りの視線が変わったように思いました。
──先日、音楽ナタリーの企画でいろんな著名人の方に人間椅子のフェイバリットソングを伺ったんですけど、昔からファンだったという方でも比較的最近の曲を挙げている印象がありました(参照:
人間椅子30周年記念アンケート)。
和嶋 確かにフェスとか対バンイベントでは新しい曲のほうがウケることもありますね。最近の曲もパワーを持っているんだと実感できてうれしいです。こういう状況について、ほかのバンドの人たちからは夢を持てると言ってもらえることもあって。
鈴木 偶然だけど2019年に30周年を迎えてるバンドっていっぱいいますよね。
──THE YELLOW MONKEY、電気グルーヴ、東京スカパラダイスオーケストラ、DREAMS COME TRUE、the pillows、フラワーカンパニーズ、真心ブラザーズ、RHYMESTER、LUNA SEAなどがそうですね。
鈴木 僕の想像だと、30周年っていう山はまだ登りやすいんだけど、40周年っていうのは厳しいですよ。
ナカジマ 確かに年齢的にね。だって20歳で始めたら60歳ですもんね。
和嶋 だからもう40周年が近付いたら毎年アニバーサリーイヤーでもいいでしょ(笑)。
不思議と白塗りしてるように見える胸像
──「ナタリーストアで人間椅子の像を作ろう」という企画は1年以上前から進んでいたんですよね。
ナカジマ この企画が持ち上がった当初は「実現するかわかんないけどやってみましょう」という感じでした。この像のもとになる写真を撮ったのが「新青年」のジャケットを撮影したのと同じ日だったね。
和嶋 感慨深いな。打ち合わせではいろんな案が出たよね。もうちょっと手頃な価格帯で買えるほうがいいんじゃないかとか。ソフビっていうアイデアもあったけど、30周年に出すんだからリアルなほうがいいってことで銅像のようなものを作ることにして。
ナカジマ すごくうれしいですよね。よくここまで再現したなっていう。
鈴木 この像を作るための写真を4方向から撮ってもらったんですよ。そのときに普通の表情をしていたから、試作品ではすました顔のお坊さんにしか見えなくて、白塗り感が全然なかったんです。だけどいかつい顔に修正してもらったら、金色一色なのになぜか白塗りしてるように見えてくるから不思議ですよね。何回も指摘した甲斐があった(笑)。
──修正指示を出したのは具体的にどういうところですか?
和嶋 眼鏡の部分とか。ソフビだと特になんも言わなかったと思うんだよね。似てなくて当たり前っていうか。ただこういうふうに銅像っぽくするんだったら似てないとね。
鈴木 思いっきり似てないんだったらそれはそれで「デフォルメしてるんだな」「恐いほうに振り切ってるんだな」と思えるんだけど、試作段階では中途半端に似てなかった(笑)。
和嶋 まじまじと見たら1人も似てないんですよ。「これは誰なんだろう? 人間椅子のカバーバンドかな?」と思ったくらい(笑)。思わず爆笑してしまいました。とはいえさすがにこれじゃいかんと思って。
鈴木 直す側もイライラしたかもしれない。いっぺんに全部言ってくれよって。
ナカジマ どんどん気付いちゃうんだよね。オーダーするたびにいろいろ変化していくからその過程が面白かったです。最初はズボンが筒状だったんですよ。
和嶋 小姑のようにチクチク言って、たくさん修正をお願いしてしまいました。
ナカジマ そのおかげで衣装のデザインもよくて、みんな着物がリアルだもんね。特に僕の衣装の柄は苦労したと思いますよ。これ背姿もバッチリです。1つひとつ手作業で生産してるから汚し具合とかも微妙に違うんですよね。
和嶋 研ちゃんの顔がヤンキーマンガのキャラクターみたいなんだよ。「魁!!男塾」っぽい。
鈴木 塾長ね(笑)。
ナカジマ 研ちゃん実際こういう顔するけどね。
和嶋 みんな実物よりカッコよくなってる。男感満載でいいよ。
ナカジマ これだけうまくいくと、ちょっとクセになりますよね。今度は逆に、ものすごくデフォルメした「brokker」みたいなものを作っても面白いかも。
鈴木 まあまあ。今回の売上げを見てから考えましょう……(笑)。
車のエンブレム、金庫の番人、使い道はいろいろ
──どこに飾ろうか悩みますね。
和嶋 ぜひ枕元に。常に悪夢を見ることになりそうですが(笑)。
ナカジマ 夜中にささやいたり動いたり、気が付いたら毛が伸びていたり……怪奇現象とか起こしてくれたらすっごくいいな。
鈴木 金庫の中に入れておけば泥棒が開けたときにびっくりしますよ。
ナカジマ 逆にこれ高価なものだと思って持っていくかもしれない。
鈴木 あと車のフロントとか? エンブレムにしてボディのとこに置いてもいいね。
ナカジマ タクシーみたいに車の上の部分に置くのは? でも雨ざらしになっちゃうか。ほかのグッズと一緒に飾って“人間椅子神棚”を作って、毎朝手を合わせるとか?
和嶋 あんまりご利益ないよ(笑)。
──飾る以外に使い道あったりしますか?
ナカジマ 文鎮にはなりそうですよね。
和嶋 基本的には机に置いてもらうのがいいんですかね。色が映えますもんね。
ナカジマ あとは旅先に持っていって一緒に写真を撮るとか。
和嶋 うまくやれば遠近法で一緒にいるように撮ることもできる。いろんな可能性を持った商品ですね。
一家に1つ人間椅子
──ノブさんは特撮モノのフィギュアやソフビのコレクターでもありますが、そういう収集家目線の意見は胸像のディテールに反映されていますか?
ナカジマ そこまで自分のこだわりみたいなのは主張してないです。
和嶋 いや、俺はこだわりを感じたよ。髪の毛をもうちょっとこうしたほうがいいとか、僕らでは気付かない細かいポイントを指摘してたから、やっぱり好きなんだなと思いました。
ナカジマ 好きだからそうなっちゃったんですかね。個人的に3、4体は欲しいです。1個は僕のコレクションと一緒に飾って、もう1体は親父にあげようかな。
和嶋 贈りものにもいいですよね。結婚式の引き出ものとか……あまりうれしくないか(笑)。
ナカジマ でも新郎新婦が人間椅子ファンだったらいいんじゃないですか。新郎新婦の名前を入れてもらって。あと、買った人が彩色したらすっげー面白いだろうな。
和嶋 鈴木くんの顔を白く塗るという。力作になりそうですね。
──最後に、買おうか悩んでいるファンに向けてメッセージをお願いします。
和嶋 30周年のメモリアルに合わせたものなので、我々のファンを自認している方なら一家に1つ。いつも人間椅子を身近に感じられると思います。
ナカジマ 本人たちが見てもけっこうリアルだから、お得感満載ですね。
鈴木 今買わないときっと来年以降は手に入らないし、悔いを残さないためにも買ったほうがいい。買うか買わないか迷うぐらいの人だったら買ったほうがいいんじゃないですかね。中野のまんだらけに高い金払って買うぐらいだったら。
ナカジマ ははは(笑)。まんだらけにあったら救済のために買っちゃうかもしれないな。「こんなところにいちゃダメ!」って。
人間椅子30周年記念胸像
先着300体限定
価格:18,000円(税別)
発売日:2020年2月2日(日)19:00
商品お届け:2020年5月お届け予定
※限定数に達し次第販売終了となります
※生産の都合でお届けが前後する可能性がございます。あらかじめご了承ください
※お届けの目処が立った時点で、ナタリーストアより入荷のお知らせメールをお送りします
人間椅子(ニンゲンイス)
和嶋慎治(G, Vo)、鈴木研一(B, Vo)、ナカジマノブ(Dr, Vo)による3ピースバンド。1989年に出演したTBSテレビ系「平成名物TV イカすバンド天国」で高い評価を獲得し、1990年7月にメルダックより「人間失格」でメジャーデビューを果たす。その後インディーズでの活動や、ドラマーの交代などを経ながらも、コンスタントにライブやリリースを重ねていく。Black Sabbath風のハードロックと地元・青森の津軽民謡を掛け合わせた独自のサウンドや、江戸川乱歩などに影響を受けた文学的な歌詞、確かなテクニックに裏打ちされたライブパフォーマンスで、音楽ファンの厚い支持を集め続けている。2012年、ももいろクローバーZのシングル「サラバ、愛しき悲しみたちよ」に収録された「黒い週末」に和嶋がギターで参加したことが話題に。2013年にはオジー・オズボーンのオーガナイズにより千葉・幕張メッセで開催されたロックフェス「OZZFEST JAPAN 2013」に出演し、そこでのパフォーマンスが大きな評判を呼ぶ。2015年1月に約23年ぶりとなる東京・渋谷公会堂でのワンマンライブを成功させた。2018年にはBSジャパンの連続ドラマ「三島由紀夫 命売ります」に主題歌として「命売ります」を提供。2019年6月に30周年記念アルバム「新青年」、12月にベストアルバム「人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤」をリリース。2020年2月には「NINGEN ISU EU TOUR 2020」と題した初の海外ツアーを行う。
人間椅子オフィシャルサイト